2010年11月28日 星期日

アベルとレダの物語/天野可淡

アベルとレダの物語
Abel和Leda的故事


昔々、まだこの世に夜も昼も無かった頃のお話です。
這是個在世界還沒有白晝與黑夜時的古老故事。


 すべてのものがあたたかな光に満ちあふれておりました。天上には自信にあふれたお日様と、ほほえみをたやさない奥様のお月様がお日様に寄り添いながらやわらかな空間に浮かんでおりました。地上では仲の良い兄妹が何不自由なく暮らしておりました。

萬物洋溢在溫暖的陽光下,自信滿滿的太陽公公、與陪伴在身邊始終保持著微笑的月亮太太一同漂浮在柔軟的天空之中。地上則是對親愛的兄妹無拘無束地生活在一起。


お 兄さんの名前はアベルといい、妹の名前はレダといいました。二人はお互いの手櫛で髪をすきあいながらキラキラ光るお日様の光にかざしてみると、そのすき間 から幾粒もの金色に輝く砂がこぼれおちました。そしてそんな時、二人は真珠色の肌をちょっと染めてはにかみあうのでした。湖の岸辺に金色の砂を生みだすこ とが神が二人に定めた仕事でありました。二人の生みだした金色の砂は湖の底まで美しく輝かせ、二人の瞳は湖のように深く、透明な水色をしておりました二人 は何百年もの間、その瞳を曇らすこともなく幸せに暮らしておりました。

哥哥的名子叫做Abel,妹妹則是Leda。當兩 人在燦爛的陽光照射下,用手代替梳子互相替對方梳頭時,幾粒閃著金色光芒的沙子便這樣掉了出來。此時,兩人珍珠色的肌膚微微染上紅暈。在湖岸邊生出金色的 沙子是神為兄妹倆所規定的工作。兩人生出的金沙即使在湖底仍閃著美麗的光芒。幾百年來兩人幸福的生活著,透明的淺藍色眼瞳就如湖般深邃、不曾混濁。


ある日一匹の妖精が砂のこぼれる音に誘われて森をわけてやって来ますと、美しい兄妹が湖のほとりで髪をすきあっている姿を見てしまいました。妖精はなぜか見てはならないものを見てしまったような気がいたしました。そしていそいでその場から逃げ去りました。

某日,一匹妖精被沙子落下的聲音吸引,穿越森林來到湖畔。發現了正在互相替對方梳頭、美麗的兄妹倆人。妖精發覺自己目睹了不該瞧見的場景,於是慌忙的從那裡逃走。


し ばらくして妖精は兄のアベルにすっかり恋をしてしまった事に気がつきました。しかし気の弱い妖精は決して兄妹の前に姿を現わすことなどはできませんでし た。たのしそうに手を取りあって花を摘んでいる様子や一つの果実を分けあっている様子や、そして湖で水をかけあいながら鬼ごっこをしている様子などを大き な樹の陰でこっそりのぞきながら胸をこがしておりました。

一下子、妖精便意識到它愛上哥哥Abel了。可弱小的妖精是無法在兄妹倆人面前現身的。它只能悄悄地躲在大樹的陰影下,偷窺兩人愉快的手牽著手摘花、同時享用一個果子、和在湖裡戲水並互相追逐的模樣,一邊燃燒著胸口。


  何日も何日も小さな妖精は大きなためいきをつきながらすごしました。そしてとうとうその大きなためいきは小さな妖精を食べはじめました。そして大きなため いきが小さな妖精の最後の一切である心臓を食べようとしたとき真紅の心臓は小さな赤い魚になり湖の中に飛び込みました。静まりかえった青い湖に小さな赤い 水紋が一つできました。そして静かに広がり何もなかったように消えていきました。そのできごとは湖の精がちょっと棘を刺したような小さな痛みを感じたほか はそれに気付く者はいないかのようにみえました。

每一天,小妖精都在重重的嘆息中渡過。然後這股沉重的嘆息終於開始吞噬 小妖精。當妖精最後殘存的一塊心臟即將被吞沒時,鮮紅的心臟變成了一條紅色的魚跳進了湖中。藍色的湖隨即回復了安靜,只在水面激起一圈小小的紅色水波,然 後像什麼都沒發生似的消失了。除了湖的精靈感到如被小草扎了下般的小疼痛外,其他沒有任何人注意到。


  すべての災いはほんの些細な獲物に悪魔がやどる事から始まります。かしこい神はそれを知っておりましたから、彼は最初から何も作りませんでした。何も作ら なければ何も起こらずすべてのものが幸福にいられることをかたく信じておりました。一方悪魔はそんな何もない、そして何も起こらない世界をつまらないと考 えました。そして何千年何万年もの間、腹のへった体を丸くしてうずくまり、神の定めた乳白色の空間を、ただ目だけをギョロギョロさせてただよっておりまし た。ですから地上で起きた小さな赤い水紋は悪魔の待ちに待ったかっこうの食事でありました。
所有的災難從惡魔寄宿在它微 不足道的獵物一事開始。全能的神知道這點卻打從開始便袖手旁觀。因為祂堅信只要什麼都不作就什麼都不會發生,這對萬物來說便是幸福。但另一方面,惡魔對這 什麼都沒有、什麼都不會發生的世界感到相當無趣,惡魔在長達千萬年的時間中,蜷起飢餓的身軀、蹲在神所制定的乳白色空間,一邊漂浮一邊睜大眼睛窺探。因此 地上揚起的小小的紅色水波正是讓惡魔等了又等,最適合的餐點。


 悪魔はキラリと目を輝かせたかと思うとものすごい勢いで湖の中に飛び込みました。そして蛙の少年に身を変えて先まわりをして湖の底で赤い魚を待っておりました。そこへ何も知らない赤い魚が泳いできました。そして蛙の少年がいろことに気が付き、近づいてきて言いました。

惡魔眼睛一亮,馬上以迅雷不及掩耳之勢跳進湖中。接著搖身變成青蛙少年,並搶先一步潛入湖底等待。小紅魚毫不知情的游向惡魔,並注意到了青蛙少年,於是接近他說..


「まぁこの湖に私の他に飛び込んだ者がいたなんて思いもしませんでした。貴方はいったい誰ですの?」

「沒想到除了我以外還有其他人也跳進這個湖裡。你到底是誰?」


「君の望んだ者さ。」
「是你所期望的人。」


 蛙の少年はニヤリとして言いました。
青蛙少年露齒一笑回答。


「私は何も望んでおりません。それどころか望みを失ったからこんな姿に身を変えて湖の中に飛び込んだのですわ。」


「我並沒有在期望著什麼。到不如說因為我失去了期望,才會變成這副模樣來到這湖中呢。」

「うそをいっちゃいけないよ。」
「不可以說謊呦。」


 蛙の少年は腹をかかえて笑いはじめました。赤い魚はなおさら真赤になり脇びれを忙(せわ)しく動かしながらはきだすように言いました。 

青蛙少年捧著肚子開始笑了起來。小紅魚快速的脹紅全身,並一股腦地吐露出來。

「貴方は何もわからないのです。私が自分の存在そのものを拒絶し、絶望の底に身を沈めたことを。」
「你真是什麼都不懂。我是拒絕自己本身存在的意義,而沉入絕望的湖底的」


 蛙の少年はさらにひっくりかえるばかりに笑いはじめました。そしてヒイヒイいいながら水かきのついた手で目にたまった涙をぬぐうとこわい顔をして言いました。

青蛙少年更加笑得東倒西歪,然後在狂笑聲中用長了蹼的手抹去留在眼角的淚水,露出很恐怖的表情說道。

「では、君の存在は何?絶望が君を食いはじめ最後の一口を食べようとした時、なぜ君は逃げたのかい?君が存在する以上、君は僕を必要とするのさ。」
「那麼,你的存在究竟是什麼?在絕望即將吞噬你之前,你為何逃跑了?你有那個存在的價值,你是需要我的。」


 小さな赤い魚は蛙の少年に身をゆだねる以外に道は有りませんでしだ。蛙の少年は言いました。
小紅魚除了將身體獻給青蛙少年外沒有其他的辦法了。青蛙少年說。


「こわがることはないのさ、なにも僕は君を取って食おうとしている訳じゃない。僕はちょっと退屈しているだけなんだ。僕の退屈を君の体の中でちょっと泳がせてみたいだけなのさ。」

「沒有什麼好怕的,我並不是要吃掉你。我只是感到有點無聊罷了,讓我在你的身體中稍微排遣一下吧。」


赤い魚は恍惚の痛みと共に一人の少女に変化していくことに気付きました。そして朦朧とした意識の中で悪魔がこうささやいたような気がいたしました。

小紅魚在恍惚之中隨著一陣疼痛變化成了一名少女。朦朧的意識中隱約聽到惡魔在耳邊的低語。


「そう、これこそが君の望みだよ。」と。
「沒錯、這才是你的期望。」



湖のほとりにはいつと変わらぬあたたかな光がさしておりました。兄妹はいつものように岸辺にやってきますと水を飲もうと身をかがませました。そして水面に顔を近づけますと妹のレダが怪訝な顔で言いました。
湖岸邊和平日沒有什麼兩樣,溫暖的陽光依舊。兄妹倆人也和往日般來到湖邊飲水,然後就在妹妹Leda彎下腰靠近水面時,她突然訝異的說道。


「お兄様、水に映る私の顔がいつもと様子が違うような気がするのです。」
「哥哥,倒映在水面上的我好像和平時不太一樣。」

兄が妹の顔をのぞき込み言いました。
Abel瞧了妹妹的臉龐然後說道。

「いいや、レダ。君はいつものように澄んだ瞳をしているよ。水面に落した君の影だって……。」
「沒有這回事,Leda。妳落在水面上的倒影一如既往,水面上落下的只是妳的影子罷了……」


とアベルは口をつくみました。そこに映っていた顔はどこから見ても妹のレダの顔をしているのてしたが、瞳は炎のように赤く燃え、唇は果実のように甘く熟れておりました。

Abel這麼回答了。在水面上的倒影確實怎麼看都是妹妹Leda的模樣,但眼瞳如燃燒的火炎般赤紅,嘴唇如果實般甜美成熟。


  その日から兄は妹のレダを避けるようになりました。なぜならアベルは水面に映ったレダの中に、まぎれもない自らの本性をかいまみてしまったと思ったのであ りました。それが悪魔のしかけた罠と気付くにはあまりにも彼は未熟で純真でありました。兄はこっそりともう生まれることのない金色の砂をひろい集め、樹の 皮とその樹脂で一枚の絵を描きあげました。妹レダに対する兄の切実なる思いと、それを踏みにじる裏腹の邪念を封じ込める為に。

從那天以來,Abel便開始躲避妹妹Leda。如果要說為什麼,那就是Abel認為陡然在水面上Leda的倒影中窺見了自己毫無掩飾的本性。沒有看穿這是 惡魔所佈下的陷阱,顯示了他的不成熟與過於純真。Abel偷偷地把已經不再生出的金色沙子廣為收集,用樹皮和樹脂畫了幅畫,將對妹妹Leda的深切的思念 與心中踐踏這份心意的邪念封印起來。


一 方妹のレダは兄にとりのこされ、訳がわからぬままに毎日泣き伏しておりました。大きな水色の瞳からは幾粒もの孤独がこの世に生まれました。悪魔はその様子 をみると炎を纏いながら湖から出てきました。そしてレダの流した涙の玉をひろいあつめ、時の螺旋に絡み付け、美しい首飾りを一つ作りあげました。そして自 分の首にまくと何くわぬ顔で、レダに言いました。
另一邊不明白為何被兄長遺棄的 Leda 只能鎮日哭泣,大大的藍色眼瞳中掉出幾粒眼淚,自此孤獨在這世界誕生。惡魔見狀從湖中圍繞著火焰出現,撿起 Leda 流下的淚之石,以時間的螺旋串起,作成一串美麗的項鍊。將項鍊纏繞在脖子上後,惡魔裝做不知情的模樣對著 Leda 說:


「おまえは神にそむいたな。なぜならおまえは血をわけた兄との永遠を望んでしまったのだよ。それがどういう事かおわかりかい。神は今、悲しみ怒っておられるよ。」

「妳背叛了神吶。因為妳企望和流著相同血液的哥哥永遠在一起。知道這是怎麼一回事嗎。神現在,正哀傷的發怒了喲。」


 レダはびっくりして言いました。
Leda 嚇了一跳說。


「いいえ。私は神様にそむいたおぼえはありません。私はただ身の不幸に涙を流しているだけなのです。」

「不是的。我不記得做過什麼背叛神的事情。我是為自身的不幸哭泣罷了。」


 すると、悪魔はいじわるく赤い舌を出しながら言いました。
於是,惡魔戲弄地伸出牠紅色的舌頭說。


「そうらごらん。神の定めたおまえの仕事は湖のほとりに幸せの金の砂を生みだすことじゃなかったのかい。いまのおまえのしていることは悪魔の定めた不幸な孤独の玉をこの世に生み出していることではないのかい。」

「妳瞧瞧,神規定妳在湖畔的工作不是生出幸福的金色的沙子嗎?妳現在所做的,可不是惡魔的行為,生出不幸的孤獨之石到這世上嗎?」


それを聞いたレダは、湖にとびこみ、大きな真珠貝になにました。そしてレダの涙で湖は海に変わりこの世に生まれる不幸の数だけ美しい真珠を生みだすことを悪魔に約束させられました。

聽到惡魔這麼說的 Leda 立刻跳入湖中,幻化成一顆巨大的貝殼。 Leda 的眼淚讓小湖變成了大海,並和惡魔定下了約定,只要這世上產生多少不幸,她便生出多少美麗的珍珠。


悪魔は再びレダの姿に身を変えると草の深い丘にうなだれる兄のアベルのもとにやって来ました。首には美しい首飾りが輝いておりました。

惡魔再次變化成 Leda 的姿態,走向草叢深處的小丘,來到正垂頭喪氣的哥哥 Abel 之前,Leda 脖子上美麗的項鍊閃閃發光。



「ああ、お兄様、なぜ私をお避けになるですか?今までのようなおやさしいお兄様はどこかへ行ってしまわれたのですか?そんな事はないでしょう。さあいつもの様に私を抱いて髪をすいて下さいまし。肌をさすって下さいまし。」


「阿阿、哥哥,您為何要躲著我呢?至今為止那個溫柔的哥哥到哪裡去了?怎麼可能會有這種事呢。來吧,就像平時那樣,抱著我替我梳頭,撫摸我的肌膚。」



 兄のアベルは身をかがめ、自分を失うまいと幾束もの草をぎゅっとつかみました。彼の拳は小刻みに震え、草のくい込む白い指の間からは幾すじもの血が流れておりました。それを見た陰のレダはニヤリとして兄の耳もとでささやきました。

害怕被 Leda 話語所迷惑的 Abel 彎下身子,緊緊抓住地下的草,微微顫抖的雙手被草緣所割破,白皙的手指間滲出了幾滴血。見狀 Leda 輕笑的在哥哥耳畔悄聲說道。


「お兄様の血は私の血。
私の肉はお兄様の肉。」


「哥哥的血就是我的血。
我的身體就是哥哥的身體。」


 兄のアベルは奇声をあげたかと思うと天上のお日様めがけて銀の砂で描いた絵を力一杯ほうりあげました。絵はくるくると回りながら矢のようにお日様のひたいにめりこみました。

Abel 發出了一聲怪聲,用力舉起那幅銀色的砂畫朝向太陽公公而去。只見畫滴溜溜地旋轉,像箭一樣射向太陽公公的額上。



  そして今度は陰のレダが自分の首にある首飾りをむしり取るとエイと天上のお月様めがけてほうりあげました。首飾りは一粒づつくるくると放ちながら天上に消 えていきました。そして最後の一粒がまるで銀の鉄砲のようにお月様の喉のあたりにめり込むと、天上は、真二つにわれはじめました。二つにわかれた天上には 光の世界にお日様が、闇の世界にお月様がちらばった首飾りからできたお星様をしたがえて、それぞれにおさまっておりました。
這回換 Leda 將脖子上的項鍊扯下,嘿的一聲拋向月亮,項鍊一顆顆的飛去,消失在天空中。最後一顆珍珠更像銀色的砲彈朝向月亮的咽喉,天地自此分裂成兩半。太陽照耀光的世界,黑闇則是月亮和項鍊四散後變成的星星伴隨它,各自安穩的運行著。


兄のアベルは陰のレダを抱きあげると闇の中に消えていきました。レダの首から新たな真珠の玉が一つ、闇の中でキラリと輝いたかのようにみえました。

哥哥 Abel 抱著假的 Leda 消失在黑闇中。只剩一顆 Leda 掉落下的珍珠,在黑暗中閃閃發光。





Fin


本篇文章出自2007年12月24日再版的『KATAN DOLL RETROSPECTIVE』

2010年11月26日 星期五

2010年10月27日 星期三

冨樫義博『レベルE』アニメ化決定!


 
連載終了から10年以上経ても、未だ語り継がれる希代未聞の傑作がついに復活!10月23日より開催中の「ジャンプスーパーアニメツアー2010」にて、冨樫義博氏の人気漫画『レベルE』のアニメ化が発表された。

『レベルE』は「週刊少年ジャンプ」誌上で掲載されていた作品で、10年以上経った今でも根強いファンが存在する人気作品。今のところ詳細な情報は不明だが、今後発表されていくとのことなので、注目してみよう!

アニメ『レベルE』
原作:冨樫義博(集英社「ジャンプ・コミックス」刊)
アニメーション制作:ぴえろ×david production

http://www.animate.tv/news/

2010年10月24日 星期日

少年マンガ論 <少年漫畫論>




...
                                                                               
「バトルもの」マンガにおいて、主人公たちはなぜ戦うのか?結論を言う。
在格鬥漫畫中的主人公們究竟為何而戰?從結論說起-
                                                                                                                                                                                                                                             
その「戦い」に、実は意味はない。
這個「戰鬥」,其實並沒有任何意義。
                                                                              
                                                                              
  そもそも、少年ジャンプの編集方針「友情 努力 勝利」というものの2後者は戦いの場でしか得られないものである。おそらく読者の少年たち(そしてすでに成人した者でさえ)があこがれるのは、ただ「戦い」に対してなのだ。それを「主人公の活躍」と表記してもいい。だが「主人公の活躍」の意味内容とはすなわち、「戦い」に勝利することなのだ。
原本少年JUMP編輯的方針「友情、努力、勝利」-後兩樣,只能在對戰的場合中獲得。恐怕少年-或甚至已成人的讀者們所憧憬的,只是對於能夠「戰鬥」本身這件事。你也可將它看成主角活躍的一個象徵。換言之「主角的活躍」即意味著對戰鬥的勝利。
                                                                              
                                                                                                                                                              
  ただ「戦い」だけが要請される。「なぜ」戦うかは執拗に問うべきではないなぜなら、主人公に代わって戦いたい私たちの、戦うための内心の理由とは、単なる攻撃性の昇華、カタルシスにすぎないかもしれないからだ。
                                                                               
對於漫畫內容只要求有「戰鬥」,對於「為何」而戰則不應過度追究。因為想代替主人公戰鬥的我們,在內心深處的理由說不定只是一種攻撃性的感情昇華罷了。
                                                                              
                                                                                                                                                              
  攻撃性への誘惑、それはもう、男女問わず秘めたる想いだ。少年マンガは、そんな我々の内なる願望を、「完全悪」という名の大義名分によって無害化してくれる素晴らしいものだ。勝利ほど甘美なものはない。「勝つ」ことは、驚くほど人間を充たし、優越感を補完してくる。

不分男女,內心都有暗自受到攻擊性的誘惑,而少年漫畫這種美妙的產品則可以提供一種叫做「完全惡」(就應該去攻擊)的大義名分,讓讀者發洩攻擊慾的行為變得無害。再也沒有什麼果實能比勝利更甜美,「勝利」能夠帶給人們極為驚人的充實感,填補他們心中的優越感。

                                                                                                                                                                                                                                              
  少年マンガに置いて、理由なき戦いが説明されぬまま反復されるのは周知のことであるし、マンガというものが作品であると同時に消費される商品であるということを考えれば、需要に対する供給、の結果としか言いようがない。                                                                               
少年漫畫中不斷反覆著沒有理由戰鬥是眾所皆知的事。但若從 "漫畫在身為作品的同時也是一件被消費的商品" 這種角度來思考,這樣的結果也只能說是「對需求所產生的供給」吧。
                                                                              
                                                                              
戦いを求めて止まない読者が存在する、ということがすでに「戦う理由」なのだと思う。
只要渴望戰鬥的讀者存在,本身便足已是這個「戰鬥」的理由了。


 

2010年10月7日 星期四

可淡回想 II/吉田良

可淡回想 II  
回想起可淡 II

吉田 良 [人形作家]


「オイ、死ぬぞ!」
「喂、想死啊!」

「あ、やば~」
「阿、糟糕~」

「火気厳禁! ガソリン給油機の下に腰掛けてタバコ吸うか」
「嚴禁煙火! 竟然在加油機下面坐著抽菸」

くさって落ち込んでいた彼女をバイクの後ろに乗せて奥多摩の山の上までツーリングに行った時のことです。 
這是帶著情緒低落的她坐在摩托車後面,到奧多摩的山上兜風時的事情。

「見晴らしがイイでしょ。スカッとしない」
「視野不錯吧。不覺得很爽快嗎」

「バイクって気持ちいいね。車の免許と一緒にバイクの免許もとるよ。後ろに乗せられてるんじゃヤダヨ」
「摩托車真不錯呢。乾脆和車子的駕照一起考吧。我不喜歡光坐在後面-」

「えッ! やめときなよ。一人でコケたって怪我するよ。子供だっているし、危ないよ」
 「诶! 不要這樣。就算你一個人摔車也是會受傷的,更何況你還有孩子,很危險的。」

「あなたはどうなのよ!」
「你到底想說什麼啦!」

「グッ……」
「唔b……」

 その数ヵ月後には2台のバイクで東北自動車道を走っていました。
幾個月後,兩台摩托車在東北自動車道上奔馳。

大谷石の石切場の洞窟を舞台に山海塾の舞踏公演があるというので、それを見るためツーリングに出かけたのです。前日、いろは坂を上って湖畔でキャンプを張りました。
我們為了山海塾在大谷石石切場的洞窟作為舞台演出的舞蹈公演而出門遠遊。表演前一天,特別從いろは坂到湖畔紮營。


霧が降りて静寂につつまれた湖は闇が深くなるにつれてまるで別世界にいるような幻想的な情景を作り出していました。 
霧氣降了下來,被寂靜包圍的湖水越發闇沉,宛如身處異世界般的幻境。

「焚き火の炎を見つめていると吸いこまれそう……」
「凝視著溝火的火焰我就好像要被吸進去一樣……」

「自然の霊気にとりこまれそうになるね」
「好似被自然的靈氣包圍著」

 はじめての体験でとても感動的だったようです
  首次的體驗似乎讓她非常感動的樣子。


天野可淡は今で言う男前の女性です、言い出したら聞かない、思いを成しとける人でした。 
天野可淡是以現今來說有"男子氣概"的女性,旁人說什麼都聽不進去,想到什麼就會去執行它的人。

ヘビースモーカー、くわえタバコでジープを運転し、バイクを転がし、そしてフラメンコを踊る、料理の好きな二児の母親でもありました。 
重度煙癮、叼著香煙駕駛吉普車和摩托車,還有跳佛朗明哥,喜歡料理、是兩個小孩的母親。


彼女の人形は単に人をモデルとしてそっくりに写した人形ではありません。時には動物を人間化した人形であったり、人間世界の哀れであったりします。彼女のイマジネーションのなかで自由に変貌し人形として生まれ出るのです。
她的人偶並非只是以人當作模特兒摹寫的很像而已。有時會把動物給擬人化、或是表現人類世界的悲哀,在她的想像之中自由的變化外型然後做為人偶生出。

彼女の心の眼差しは物事の表層ではなく深淵に向けられていました。そして敏感で傷つきやすい魂の持ち主でもありました。
她對事物的洞察並非只有表面,是更深層的部分。並且擁有敏感且容易受傷的靈魂。

「私はイメージを排泄しているのではなく、内で育てて生み出しているのよ」
「我不是作出一個型體的樣子,而是從內在孕育出它們」


 上野の東京都美術館で毎年開催していた駒展に出品するために胎児を中心に置いたオブジェ作品を作っていました。
為了在上野的東京美術館每年召開的駒展中展出,做了一件中心放置著胎兒的作品。

精密ガラスを加工する職人さんにいただいた廃物のガラス管を構成して見事な作品に仕上がりつつありました……
從專門幫精密玻璃加工的師父那裡拿到的廢棄玻璃管,再加工後作成、令人讚嘆的作品……

「タイトルを考えてよ」
「幫我想個名稱吧」

「いわゆる人形の領域を超えてるね…ウーン…バイオスフィア」
「這是所謂超越人形領域的作品呢 …恩…就叫Biosphere」

「バイオスフィア……いいね、ピッタリ」
「Biosphere……不錯哦,很適合」

「意味わかってる?」
「妳懂意思嗎?」

「わかってるよ!」
「我懂啦!」


友人に誘われて現代童画展には油彩画を出品しはじめました。 
應友人的邀請,開始在現代童話展中展出油畫作品。

学生時代は油彩画を学ぶ、人形の仕上げの彩色も油彩でした、絵画に対する思いも捨てがたかったのか夢中でキャンバスに向かっていました。
學生時代曾學過油畫,人偶用來上色的顏料也是油彩,對於繪畫有著難以割捨的情感,非常熱中的拼命作畫。

「絵は背景を描けるから人形とは別の世界がつくれるの」
「繪畫因為有背景,所以可以作出和人形不同的世界」

「人形つくるの辛くなった?」
「做人偶很辛苦吧?」

「そりゃ常に楽に作品ができるわけないし、難産の時は苦しいわよ、今、絵を描くの楽しいし、気分転換になるじゃない……」
「這個…當然不是常常能輕鬆的完成作品,難產的時候就很痛苦。現在把繪畫的樂趣當作是改變一下心情……」


なにをするにも真剣なのです。
 不管做什麼都非常認真。

「ストライプハウス美術館で個展するわよ」
「我要在STRIPED HOUSE美術館舉辦個展呦」

「エッ…何階で」
「诶…在幾樓」

「全館よ!」
「整棟!」

「広さわかってるの? 全フロアだとすごい広さだよ」
「妳知道場地有多大嗎? 每層的話大得不得了喔」

「もちろん! 以前の作品も借りられるし」
「當然! 以前的作品也會借回來展」

その個展はとても立派な展覧会になりました、若くして回顧展をしてしまったようです。 
那是非常成功的個展,從早年的作品開始回顧起的樣子。

この人は何故こんなに生き急いでいるのだろう…… 
這個人究竟為什麼活的這麼匆促……

翌年、私はその理由を知ることになりました。 
隔年,我知道了那個理由





本篇文章出自2007年9月30日再版的『KATAN DOLL fantasm』